1. 健康経営とは?
最近、健康経営という言葉を耳にする機会も増えたのではないでしょうか?今回は、従業員と企業の双方にとってメリットが大きい健康経営について詳しく解説します。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する取り組みのことです。社員の健康増進を会社の重要な投資と考えることで、生産性向上や企業の持続的な成長につなげる狙いがあります。近年、日本では少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化しており、限られた人材で業績を維持・向上させていくためにも従業員一人ひとりの健康とパフォーマンス向上が重要になっています。また、「働き方改革」での健康意識の高まりもあり、企業が従業員の健康を守る姿勢はますます重視されるようになっています。
健康経営を実践することで、企業は様々なメリットを得られます。
- 生産性の向上 – 従業員の心身が健康で集中力が高まることで業務効率が上がり、結果として企業全体の生産性向上・業績向上につながります。
- 採用力の向上 – 従業員の健康を大切にする企業という良いイメージにつながり、求職者から魅力的に映るため優秀な人材を採用しやすくなります。社員を大切にする企業だという評価は、求人募集への応募者数増加や内定承諾率アップにも寄与します。実際、大学の就職支援担当者も、健康経営優良法人認定されていることを「最低限の基準」として企業を選ぶ大学生が増えていると話していました。
- 離職率の低下 – 働きやすく健康的な職場環境は社員の会社に対する満足度や愛着心を高め、結果的に定着率が上がります。実際、経済産業省の調査によれば全国平均の離職率が11.4%であるのに対し、健康経営に取り組み「健康経営銘柄」を取得している企業の離職率はわずか3.3%というデータも報告されています。このように健康経営の推進は、人材の確保と流出防止に大きな効果をもたらします。
2. 健康経営優良法人認定とは?
健康経営優良法人認定は、経済産業省と日本健康会議が主導する顕彰制度です。従業員の健康を経営の一部として重視し、積極的に健康経営に取り組む企業を「健康経営優良法人」として認定し、社会的に評価・見える化するものです。認定制度は2016年に創設され、現在は大規模法人部門(主に大企業)と中小規模法人部門(中小企業)に分かれて運用されています。
認定を受けるメリット
この健康経営優良法人に認定されることで、企業はさまざまなメリットを享受できます。主なメリットとして、以下のような点が挙げられます。
- 企業イメージの向上 – 社員の健康に配慮している企業として対外的な信用が高まり、企業イメージを大幅にアップさせることが期待できます。認定ロゴマークを名刺やホームページなどで使用し「従業員を大切にする会社」であることをアピールすることで、顧客や取引先からの信頼向上にもつながります。
- 優秀な人材の採用に有利 – 認定取得は採用活動において強力なアピールポイントになります。実際に求人募集で認定ロゴを掲示すれば、働きやすい職場環境づくりに積極的な企業として求職者の関心を集めやすくなります。福利厚生やワークライフバランスを重視する昨今の求職者にとって、健康経営に取り組む姿勢は企業の魅力となり、競合他社との差別化にも有効です。
- 従業員の定着率向上(離職率低下) – 健康経営優良法人の認定を受けるには社員が心身ともに健康に働ける環境づくりが欠かせません。その過程で労働環境の改善や社員の健康意識向上が進み、結果として社員の会社への信頼感・帰属意識が高まります。その効果で長期的に定着率が上がり、人材の流出防止や育成の促進につながります。
- 助成金・税制優遇などインセンティブ – 認定企業には国や地方自治体、金融機関などから各種支援措置が用意されている場合があります。例えば健康経営関連の補助金申請時に加点措置が受けられたり、融資の金利優遇や保険料の割引といったメリットを受けられるケースがあります。場合によっては地域の公的な入札で評価が加点されることもあり、認定取得が企業の財政的メリットや営業上の強みになることもあります。
認定基準と取得の流れ
健康経営優良法人の認定を受けるためには、一定の認定基準を満たし所定の申請手続きを行う必要があります。認定基準としては主に次の5つの要件が定められています:
- 経営理念・方針 – 健康経営に関する経営層の明確な方針策定と社内外への宣言・情報開示
- 組織体制 – 健康づくり担当責任者の配置など推進体制の整備(大企業では役員級の責任者配置が求められる)
- 制度・施策実行 – 従業員の健康課題の把握とそれに基づく具体的対策の実施(大企業は全16項目中13項目の実施、中小企業は規模に応じた一定数の項目実施が必要)
- 評価・改善 – 健康経営施策の効果検証と継続的な改善取り組み
- 法令遵守・リスクマネジメント – 定期健康診断の確実な実施、従業員50人以上の事業場におけるストレスチェック実施、労働関連法規違反の有無など法令順守の徹底
認定基準を満たしたうえで、実際に認定を取得するまでの具体的なステップは次の通りです(※中小企業の場合)。
- 健康宣言の実施: まず自社が加入する健保組合や自治体の「健康宣言事業」に参加し、会社として健康増進に関する目標を宣言します。この健康宣言が、認定取得に向けた第一歩となります。
- 社内施策の実行: 宣言した目標に基づき、健康経営の具体的な取り組みを計画・実施します。健康づくり担当者や委員会を設置し、定期健診の受診勧奨やメンタルヘルス対策、長時間労働是正など認定基準を満たす社内体制を整えます。計画的に施策を進め、必要なデータや結果を記録しておきます。
- 申請書類の提出: 取り組み内容が認定基準を満たしたら、所定の申請書類にそれらの内容をまとめて提出します。経済産業省の「健康経営優良法人認定」専用サイトから申請し、審査に通過すれば日本健康会議による正式な認定が受けられます。申請受付は年1回(例年8~10月頃)なので、そのタイミングに向けて準備する必要があります。
3. 健康経営の具体的な施策と成功事例
健康経営の具体的な施策例
実際に健康経営を進める際には、企業規模や業種に応じてさまざまなアプローチがあります。ここでは代表的な施策の例をいくつか紹介します。
- 定期健康診断の受診率向上とフォローアップ – 社員が毎年必ず健康診断を受けるよう徹底し、未受診者へのリマインドや再検査が必要な場合のフォローを行います。健康診断結果を分析して社員の健康リスクを把握し、早期の対応や生活習慣改善指導につなげます。
- ストレスチェックとメンタルヘルス対策 – 年に1度のストレスチェックを活用し、組織全体のストレス傾向を分析して職場環境の改善に役立てます。産業医やカウンセラーによるメンタルヘルス相談窓口を設置し、社員が相談しやすい体制を整えることも有効です。
- 運動・食生活改善プログラムの導入 – 社員の運動習慣づくりや食生活の改善を促す取り組みです。社内でウォーキングキャンペーンやラジオ体操を実施したり、昼休みにできる簡単なエクササイズを紹介します。社員食堂や社内販売でヘルシーなメニューや減塩食を提供したり、栄養士による食生活セミナーを開催する企業もあります。
- 労働環境の見直し – 長時間労働の是正や有給休暇の取得促進など、働きやすい職場環境づくりも健康経営には欠かせません。例えば残業削減のためのノー残業デーの導入や、終業時刻にPCを強制シャットダウンする仕組みの導入、フレックスタイム制やテレワーク制度の整備などが効果的です。柔軟で健康的に働ける環境を整えることで、社員の疲労蓄積を防ぎ生産性向上にもつながります。
健康経営の成功事例
実際に健康経営を推進し、大きな成果を上げた企業の例として、奈良県の運送業である株式会社ハンナのケースをご紹介します。ハンナ社では2017年時点で35%と高水準だった離職率に危機感を抱き、以下のような健康経営施策を実施しました。
- 禁煙支援策として「禁煙セミナー」を開催し、喫煙者の生活習慣改善を支援
- 社員への健康不安に関するヒアリングを行い、必要に応じて医療機関を紹介
- 社員の家族も巻き込んだ健康意識向上の取り組み(家族からお弁当の栄養に気を配る声が上がるなど社内外へ波及)
こうした施策の結果、社員の健康意識が高まっただけでなく職場環境も改善され、離職率は2019年1月には14%まで低下、定着率は90%に上昇しました。また同社は「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」にも認定され、自治体主催の健康づくり表彰を受けるなど社外からも高い評価を得ています。経営陣も含め会社全体で健康経営に取り組んだ好例です。
4. 健康経営を実現するために弊社がお力になれること
健康経営の推進には専門的な知見と継続的な取り組みが求められます。弊社では、企業の健康経営実現に向けたトータルサポートを提供しています。社内に専門部署がなくても、外部のプロの力を借りることで効率的かつ効果的に健康経営を進めることが可能です。弊社は貴社の予算・人的リソースに応じた施策で健康経営優良法人認定取得をサポートします。具体的には以下の通りです。
- 定期健康診断・ストレスチェックの実施支援と結果の分析 – 社員の健康状態を的確に把握するための定期健診やストレスチェックの実施をサポートし、結果データの分析までお手伝いいたします。健康リスクの高い社員への産業医面談やフォローアップも実施し、早期対応につなげます。
- 労働環境の改善アドバイス – 長時間労働の是正や作業負荷の見直しなど、働きやすい職場環境づくりに向けた具体的な改善策を提案します。従業員アンケートやヒアリング結果をもとに職場の課題を見極め、労務管理の観点から専門的なアドバイスを提供します。
- メンタルヘルスケアのサポート – ストレスチェックの結果を活用した職場環境の改善提案に加え、必要に応じて産業医面談を実施します。メンタル不調で休職された方の職場復帰支援や、管理職向けのメンタルヘルスマネジメント研修など、社員の心の健康を守る仕組みづくりを支援します。
- 申請プロセスの伴走支援 – 健康経営優良法人認定を目指す企業様向けに、初期準備から申請書類の作成・提出まで一貫してサポートします。過去の認定要件の傾向や注意点を踏まえ、スムーズに申請を進められるようアドバイスいたします。書類の書き方や必要データの整理方法についてもご相談いただけます。
- 健康経営施策の導入支援 – 認定取得に必要な社内施策の計画立案から実行までサポートします。「従業員の健康課題の把握と対策」「社内体制の整備」「制度の導入」など認定基準に沿った取り組みが漏れなく行われるようチェックリストに基づき支援します。各種研修(ラインケア研修、セルフケア研修、女性特有の疾患、栄養)も提供します。
5. まとめ・お問い合わせ
健康経営を推進することは、社員の健康維持はもちろん、企業の生産性向上や人材確保、コスト削減など多くのメリットをもたらす重要な経営戦略です。本記事で紹介したように、健康経営優良法人の認定制度を活用すれば、自社の取り組みを「見える化」して社会的な信用力を高めることができます。従業員と企業の双方にとってメリットが大きいため、まだ健康経営に本格的に取り組んでいない企業も、この機会にぜひ一歩踏み出してみてください。
しかしながら、健康経営を効果的に進めるには専門的な知識やノウハウが不可欠です。自社だけでゼロから取り組むのが難しい場合は、専門家のサポートを活用するのがおすすめです。産業医のプロの力を借りれば、効率よく的確に施策を実行でき、認定取得もスムーズに進められます。
弊社では、健康経営の導入支援から健康経営優良法人の認定取得サポートまでワンストップでサービスを提供しております。貴社の状況に合わせたオーダーメイドの支援が可能ですので、「これから健康経営を始めたい」「認定を目指したい」という場合はぜひお気軽にご相談ください。健康経営のプロフェッショナルとして、企業様の未来をともに築くお手伝いをさせていただきます!